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2020年03月17日
根管治療の内容と費用について 連載その②
ほり歯科クリニックの堀です。
先日に続き根管治療について
「日本の根管治療の費用 連載その2−②」
前回までのお話では、日本の保険における根管治療の問題点を書かせて頂きましたが、なぜそうなってしまうのか、費用の面で書かせて頂きます。
日本と世界の根管治療のおおよその費用
①日本
——保険の根管治療 現状 〜1万円(患者負担は通常この3割)
——改定により大臼歯のみ〜2万5千円(患者負担は通常この3割)
——自費の根管治療(専門医として根管治療のみ行い、保健医でない歯科医師) 10万〜15万程度 当院(4〜7万程度)
②アメリカ 歯内療法専門医 15万円〜
③ヨーロッパ 10万円〜
④フィリピンやマレーシア 5〜6万円
根管治療に必要な治療時間
保険 15分~30分/回 3〜5回 (医院と歯の状態によりさらに長期間に及ぶ事があるとも聞きます)
自費 30分~90分/回 2〜4回(当院) 世界的には60分~90分/回で1〜3回
注)治療時間は医院の体制により異なりますが、保険は治療費(制度)の都合上、一回あたりの治療時間が短く回数が多くなる傾向があります。
如何でしょうか。
日本の制度は素晴らしいものの、保険は世界的に見ても圧倒的に治療費の設定が安くなっています。適切な価格設定は国の経済状況や医院の土地柄、方針、経営状況等の様々な要素を含みますので、いくらが適正かをお伝えする事は難しいですが、日本の保険治療費1万円で、アメリカの15万円と同じ技術、コスト、治療時間、治療の質を求めることが難しいだろうと言う事は感じてもらえる思います。(アメリカの大学院を出たり、その直系の知識技術をお持ちで保険制度の囚われず最良を求めて治療されている専門医の先生は日本国内の経済状況においても、アメリカと同程度の価格設定が必要なのは上記の費用の目安の通りです)
根管治療では、「よりエビデンスに基づいた正しい治療」を徹底しようと思うと、マイクロスコープ やC Tなど高額機器の購入、無菌的処置を行うためのラバーダムや各種器材のディスポーザル化、Ni-tiファイルなどの高額な機材、またそれらの新しい知識や機材を使いこなすための技術習得のための講習会など、現在に至るまで日本で普通に行われていた治療に用いる機材類、治療方法、治療時間も含め比べて、比較にならないほど多額のコストがかかります。当院でも最善は尽くす様努力はしておりますが、自身が習得した最良最善を求める環境、技術を全ての患者様に提供する事は経営上難しく、保険、自費ともに設定の費用に応じて成功率を極力高める事を前提に出来る事、出来ない事の取捨選択を行っています。
最も基本的で大事な処置であるだけに、最近では保険内でも当院の様に比較的コストをかけ治療の質を上げる努力をしている医院も増えていますが、保険制度は費用面、技術面を含めこれらの世界的な進歩について行けていないのが現状です。(保険改定で少しずつ見直しされていますが)また、制度上は治療方針や内容に制限があり、全ての有効な治療方法、先進的な治療方法がカバーされていないため、保険制度上は抜歯の診断になる場合でも制度外の治療法を用いれば歯の保存が可能な場合もあります。
当院では保険内であっても根管治療に限らず、必要な処置にはラバーダムを行い、マイクロスコープ を使用し、十分な時間を確保し最善を尽くす努力を行なってはおりますが、制度外の治療方針をご提案させて頂く場合もあります。全てはケースバイケースですので、保険でも十分な場合ももちろんあります。しっかりと担当医、カウンセリングコーディネーターと相談の上で納得頂ける治療方針にて進める事が大切です。
日本の保険制度は素晴らしい制度ですが、全ての最善の治療法が網羅されている訳ではなく、決して万能ではありません。その理由の一部は今回連載にて書かせて頂いた内容によるところですが、医療は日進月歩です。デジタルの普及、科学の進歩と共に日々、制度が追いつかない勢いで新しくなっています。ご自身の歯を大切にするためにも、「治療する方法」、「医院を決める一つの指針」としてご存知頂ければ幸いです。